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雪子の場合-自分の名前を商標登録-

私、小林雪子(32歳)。独身。この度、脱サラして、ネイルサロンを開業します。

ずっと夢見てきた自分のお店?ネイルアートとハンドマッサージのお店です?ゆくゆくは、フェイスエステなども取り入れる予定です?女性の綺麗をお手伝いする、素敵なサロンにしたいなっ。夢は膨らむばかりです。。。

サロンの名前は「KOBAYASHI YUKIKO美容サロン」。この名前を、ちゃんと登録しておきたいので、今日は、弁理士さんに相談へ行きます?

はじめまして、弁理士の緑山です。よろしくお願いします。

サロンの名前を登録したいということですね。「爪の美容」や「顔の美容」ということで、第44類の役務を指定して出願することになりそうですね。第44類は役務の区分で、「美容, 理容, 入浴施設の提供等」があります。詳しくは将来の事業戦略を検討して役務を決定することになりますが、「美容,マッサージ」などを指定して、一区分での登録になりますね。

次に商標ですが、店名が「KOBAYASHI YUKIKO美容サロン」・・・このように氏名を含む商標は、登録が認められない可能性もあります。商標法4条1項8号には、他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標は登録できない旨が規定されているのです。

えっ? 自分の名前です。名前は商標登録できないのですか?

氏名を登録できないわけではありません。

確かに、KOBAYASHI YUKIKOは、雪子さんの氏名ですが、全国には、同じ氏名の(コバヤシユキコさん)が、他にもいる可能性があります。その場合は、登録が認められません。氏名には、特定人の同一性を認識させる機能があり、人格権保護の観点から「他人の氏名等を含む商標は登録が認められない」と規定されているのです。

ただし、必ずしも氏名が登録できないとは限りません。査定時に、その他人の承諾を得ている場合には、登録が認められる可能性があります。

そっか・・・でも、他人の承諾を得るのは大変そうですね。

そうですね、実際に他人からの承諾を得るとなると相当な時間と労力を費やすことになるでしょう。ちなみに、氏名の登録については、このような審決例があります。

『指定商品との関係においては、「aprimary AKIKO OGAWA」がデザイナーとして著名な小川彰子及びそのデザインに係る商品を表示する一体的な標章として、取引上認識されているものであるから、本願商標の構成中の「AKIKO OGAWA」の文字部分は原審説示の他人の氏名を単にローマ字書きしてなるものには該当しないとみるのが相当である。したがって、本願商標が商標法第4条第1項第8号に該当するとして、本願を拒絶すべきではない(不服2002-14893)』と判断されて、氏名の登録が認められています。

このように、氏名を含んだ商標が、ある特定の人物の商品・役務を表示する標章として認識されている場合には、他人の承諾を得ずとも、登録が認められる場合があります。特にデザイナーなどは、自分の氏名をブランド名として使用することが多いですからね。「コシノ ジュンコ」(第1697625号)や「桂由美」(第2322557号)などの氏名も登録されています。

私は有名じゃないし・・・あの、他にも店名の候補があるんです。

そうですか。では、他の候補名を検討していきましょう。他にも候補があるならば、登録できる可能性が高い商標で出願する方が、雪子さんにとっても負担にならず済むでしょう。なるほど・・・「シャトー・ド・ネージュ」!とても素敵な響きですね。

ネージュって、フランス語で、「雪」っていう意味があるんです。

雪子さんの「雪」ですね。とても素敵です。雪の城・・・真っ白な雪、白雪姫のように白い肌・・・雪子さんのイメージにぴったりですね。これならば登録の可能性もありそうですね。さっそく調査してみましょう!

ということで、このお話の結末は・・・

案件「小林雪子美容サロン」

「シャトー・ど・ネージュ」という商標を出願して、無事登録。雪子さんは、今春、ネイルサロンをOPENした。

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