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著作権判例

脱ゴーマニズム宣言事件 東京高判平成12年4月25日 平成11年(ネ)第4783号

事件のあらまし

「ゴーマニズム宣言」「新・ゴーマニズム宣言」の著者Aは、自らの著書に対して批判・反論を加えた書籍「脱ゴーマニズム宣言」の著者らBに対して、著作権(複製権)侵害、著作者人格権(同一性保持権)侵害、不正競争防止法違反を理由に、書籍の差止めと損害賠償を求めて、訴えを提起しました。

「脱ゴーマニズム宣言」には、Aの著作物である漫画が無断で掲載され、論評が展開されていた。論点は、(1)漫画の登場人物の顔に目隠しをしたこと、(2)横一列の3コマについて3番目のコマを下に変更した点が、同一性保持権の侵害に該当するかどうかです。

判決

目隠しについて

目隠しは広く行われている方法であるから漫画ないし似顔絵に適用したとしても異様な印象を与えることもない(・・・中略・・・)更にモデルの名誉感情を侵害するおそれがあることは明らかであり、被控訴人に、右名誉感情の侵害を強いなければならない理由はない」と判断されました。

目隠しが広く行われている方法であるというだけでなく、今回のケースでは、そのまま引用することで、漫画のモデルの名誉を棄損する可能性があるため、被控訴人に名誉感情の侵害を強いる理由はないとして、目隠しの改変は「やむを得ない改変」に当たると認められました。

同一性保持権の侵害であると認められませんでした。

コマの配置変更について

「被控訴人書籍のレイアウトの都合を不当に重視して原カット(ハ)における控訴人の表現を不当に軽視したものというほかはなく、(・・・中略・・・)「やむを得ない改変」にあたるということはできない」と判断されました。

コマの配置変更については、配置変更については、表現の微妙な部分まで同じといえるものではないことから、「やむを得ない改変」に当たらないとされました。

同一性保持権の侵害であると求められました。

コメント

漫画の著作物について、改変して引用することが、どの程度許容されるのかが争われた事案です。一概には言えませんが、無断で改変して引用し、それを批判・反論する場合は、著作権者の心情を逆なでする可能性がありますので、ご注意ください。

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