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商品名と企業戦略【日本とアメリカの商標制度の違い】

商標登録出願をチェックしていると、各々の企業戦略が見えてきます。商品の開発段階から、商品名を商標登録出願することもあります。ですので出願情報を見ていれば、次は「○○」という新商品(新作)を売り出すんだなぁと予想がつきます。

例えば、2016年販売予定のPlayStation4用ソフト「人喰いの大鷲トリコ」は、2009年6月3日には出願されていて、2010年1月22日に登録されています。(第5295828号:株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント)新作タイトルの商標登録を知り、販売を待ち望んでいる人も多くいるでしょう。実に7年もかけて制作しているのですね。

先日(2015年6月16日)、ソフトの販売に先駆けて、一部映像が公開されました。すごく壮大で、リアリティがあり、ワクワクする感じでした。普段あまりゲームをしないのですが、ちょっとやってみたいと好奇心に駆られました。

「人喰いの大鷲トリコ」というネーミングも、人々を惹きつけるものがありますね。大概、ヒットしたゲームは「モンハン(モンスターハンター)」「ポケモン(ポケットモンスター)」などと略されることが多いのですが、「人喰いの大鷲トリコ」は、「トリコ」「人喰いトリコ」などと略されるのでしょうか。

ちなみに英題は「THE LAST GUARDIAN」だそうです。邦題とは、ずいぶん異なりますね。この「THE LAST GUARDIAN」は、アメリカにおいて、2009年6月2日に商標登録出願されています(77750563)。しかし、この「THE LAST GUARDIAN」の出願を巡っては、一波乱あり、様々な憶測が飛び交いました。

「THE LAST GUARDIAN」の商標登録出願が放棄された!???

アメリカにおける出願「THE LAST GUARDIAN」については、2012年8月6日に出願が放棄されたということで、一時、ソフトの制作が中止されたのではと話題になりました。

THE LAST GUARDIAN

日本での商標登録「人喰いの大鷲トリコ」は維持されたままであるにも関わらず、なぜアメリカでの出願が放棄されたのでしょうか?

実は、これには法律上の理由があり、日本とアメリカの商標制度の違いが、要因となっているのです。

日本とアメリカの商標制度の違い

アメリカで「THE LAST GUARDIAN」の出願が放棄されたことにより、「人喰いの大鷲トリコ」の制作が中止されたのではと騒ぎになりました。しかし、これには理由があったのです。

アメリカは、日本とは異なり「使用主義」を採用しています。日本の「先願主義」は、先に出願した者に権利を与えるという主義ですが、アメリカの「使用主義」は、使用している者に権利を与えるという主義です。アメリカの場合、出願の際には「使用証拠」を提出しなければなりません。

使用証拠は、原則として、出願から審査完了までの間に提出しなければなりません。例外として、登録査定から6ヵ月間、使用証拠を提出する期間があり、これを5回まで繰り返し、延長することができます。つまり登録査定から最長で3年間は、使用証拠を提出する猶予があるということです。使用証拠を提出しなければ、登録が完了しません。

今回の「THE LAST GUARDIAN」の出願が放棄されたのは、制作に時間がかかり、この猶予期間の3年以内に使用証拠を提出することができず、登録を断念せざるを得なかったということです。

出願の放棄があったので、世間では制作が中止されたと勘違いされたようですが、単に、完成が間に合わなかったということのようです。その証拠に、出願の放棄のあった3日後の、2012年8月9日には、「THE LAST GUARDIAN」について再出願しています。

日本の場合はどうでしょう。

ちなみに、日本においても、登録から3年以上継続して使用していない場合には、不使用取消審判で取り消されることがあります。「先願主義」だからといって、使用しなくていいわけではありません。使用しない商標権を放置することは、第三者の商標選択の余地を狭めてしまい、経済活動を不当に制約してしまうことになります。

そもそも使用していない商標に、保護価値はないですからね。

何はともあれ、「人喰いの大鷲トリコ」「THE LAST GUARDIAN」も、ついに使用される日がきたようです。来年のソフト発売が楽しみですね。

ちなみにですが、、、
日本においては「THE LAST GUARDIAN」は商標登録されていないようです。ちょっと調べてみましたら、既に「ASD\LASTGUARDIAN∞2」という、似ている登録があるようです(第3303919号:株式会社SNKプレイモア)。
指定商品は、「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。),その他の電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具,録音済み光ディスク,その他のレコード,遊園地用機械器具,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,家庭用テレビゲームおもちゃ」となっています。

ということは、日本において「THE LAST GUARDIAN」の商標を上記商品に使用していると、訴えられてしまう可能性も・・・無きにしも非ずですね。

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