今回、問題となったのが、こちらの商標登録です。「株式会社秀インターワン」によって、2014年8月29日に登録されました。
こちらの商標登録について、「株式会社鳥貴族」が異議申立をしました。異議申立というのは、商標掲載公報発行の日から2ヵ月以内に、その登録に「異議あり!」とする申立のことです。申立があった場合は、登録査定が妥当であったかの審理が行われます。
今回の場合、申立理由は以下の通りです(異議2014-900320)。
4条1項11号は、先願先登録についての規定です。「株式会社鳥貴族」側は、既に登録されている商標と似ていると主張しています。
確かに、「称呼」が「トリジロー」と類似する部分がありますね。しかし外観は大きく異なりますね。 みなさん、どうでしょうか?
10号、15号は、有名商標についての規定です。「株式会社鳥貴族」側は、自社の商標として有名な下記の標章と似ていると主張しています。
※平成27年(2015)1月14日に商標登録出願されています。
この標章を見たことがありますか?全国で400店舗近くを展開している大手居酒屋チェーン店「鳥貴族」のロゴです。うちの近所にもありますし、かなりの有名店ですよね。
みなさん、どうでしょうか?「鳥貴族」と「鳥二郎」似ていますか?「鳥貴族」へ行こうと思って、間違えて「鳥二郎」に入ったりなんかするでしょうか。
「えーっと この前の美味しい焼き鳥屋さん、なんて名前だったっけ?」「鳥貴族?鳥二郎?どっちだったかな」と迷ったりするでしょうか。姉妹店かな?と思うことはあるかもしれませんね。
※異議申立の際には出願中でしたが、現在は、商標登録済みです。
8条1項は、先願後登録についての規定です。この鳥の商標は、「鳥二郎」よりも先に出願されているのですが、「鳥二郎」の方が先に登録されています。
「株式会社鳥貴族」側は、この先行出願の「鳥」に似ていると主張しています。双方ともにデザイン化された「鳥」の文字を使用しているので、「鳥」については似ている雰囲気がありますね。しかし商標全体としては、称呼、外観が大きく異なりますね。
結論として、「株式会社鳥貴族」の異議申立は認められず、「株式会社秀インターワン」の商標登録が維持されることになりました。維持決定は、以下の通りです。
「本件商標と引用商標1及び2とは,同一の称呼において類似するとしても,外観において明確に区別できるものであって,観念において類似するとはいえないものであるから,両商標を同一又は類似の役務に使用しても,その役務の出所について混同を生ずるおそれのない非類似の商標というべきである。」
出所について混同を生ずるおそれのない非類似の商標と判断されました。
「「鳥貴族」の標章は,本件商標の登録出願前に,申立人の業務に係る「焼鳥を主とする飲食物の提供」を表示する商標として,我が国の取引者・需要者間において広く知られていたものと認められる。しかしながら,本件商標と「鳥貴族」標章とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標と認められる。したがって,本件商標の指定役務である第43類「飲食物の提供」と,「鳥貴族」標章が使用される申立人の業務である「焼鳥を主とする飲食物の提供」とが類似するとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。」
「「鳥貴族」標章が,申立人の業務に係る役務を表すものとして,本件商標の登録出願時及び査定時において広く知られているとしても,本件商標と,「鳥貴族」標章とは,十分に区別し得る別異の商標というのが相当であるから,商標権者が本件商標をその指定役務について使用しても,これに接する取引者,需要者が,申立人又は申立人と何等かの関係を有する者の業務に係る役務であるかのごとく役務の出所について混同を生ずるおそれはないものである。したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。」
「鳥貴族」が、我が国の取引者・需要者間に広く知られていたものと認められたものの、「鳥貴族」と「鳥二郎」は非類似の商標であり(10号)、出所について混同を生ずるおそれはないもの(15号)と判断されました。
「その構成全体が一体のものとして把握されるものであって,その構成中のデザイン化した「鳥」の部分のみが要部として抽出されるものではないが,以上のとおり,本件商標のデザイン化した「鳥」の部分と引用商標3とを比較したとしても,両者は,非類似のものというべきである。したがって,本件商標は,商標法第8条第1項に該当しない。」
「鳥」のロゴは、相紛れるおそれはないものであり、また「鳥二郎」から「鳥」のみを抽出すべきでないとし、商標全体として非類似であると判断されました。
このような結果から、「株式会社鳥貴族」側の異議申立は認められませんでした。今回の異議申立は認められませんでしたが、「株式会社鳥貴族」側は、今後、商標登録無効審判で争うこともできます。無効審判で無効審決が確定した場合は、商標登録が、初めから存在しなかつたものとみなされます。
また「株式会社鳥貴族」側は不正競争防止法でも「鳥二郎」側と争っているようです。そちらの結果も、追って記載しますね。(2015/7/7)
追記「鳥貴族」と「鳥二郎」の争いは、大阪地裁で2015年10月2日付けで和解したようです。(2015/11/6)