アース国際特許商標事務所

美容家あつこさんの場合-真正商品の小分け販売-

美容家あつこさんは、近所の主婦たちを集めて美容サロンを開いています。リフトアップのマッサージ方法や美容にいい食材などについて指導しています。実はこのサロンに、緑山先生の奥様も通われているのです。その縁もあって、あつこさんは相談にやってきました。

今回ご相談したいことは、小分け販売についてです。

はい。お伺いします。

サロンで使用しているマッサージオイルがあるのですが、このオイルは○○メーカーの商品で、業務用で大きなボトルに入っているんです。それで生徒さんたちから、ぜひ小分けにして販売してほしいとお願いされているんです。とても良質なオイルですので、私としても、ぜひ皆さんにお分けしたいと思っているんです。

なるほど。

小瓶に小分けした方が、置き場所にも困らないし、使用しやすくて便利だと思うんですね。それで先生にお伺いしたいことは、このように小分けにして販売するときに、小瓶に○○メーカーの商品名「ぷ~てぃ~はにい」とロゴマークを貼って販売しても問題がないかということを・・・お聞きしたいのですが・・・。

少しお調べしますね・・・えっと・・・こちらの「ぷ~てぃ~はにい」とロゴマークは・・・商標登録されていますね。となると、商標権の侵害行為に該当する可能性があります。

でも、中身は○○メーカーさんの商品に違いはないのですよ。私はメーカーさんから正規に買っているわけだし、メーカーさんにとっても小分けにより商品が売れると、利益になりますよね。それでも駄目なのですか?

ええ。登録商標というものは、「権利者のみが使用権を有し、第三者はこれを使用することができない」と法により保障されています。登録商標とは、権利者により適法に使用されてはじめて出所表示機能を発揮し得ると考えられます。かつて小分け販売については、裁判で争われた例があります(昭和51(ヨ)2469 大阪地方裁判所判例)。

裁判長の判断は、「たとえ、真正商品であつても、何人でも自由にこれに登録商標を付し得るとするならば、登録商標に対する信頼の基礎は失われ、登録商標の機能を発揮し得ないことは明らかである。債務者らの主張は商標法の規定を無視した主張というの外ない・・・中略・・・これを小分けして転売することは予想されることであるとしても、登録商標の法律上の性質上、右の事情から直ちに権利者が右商品を売却の際これを新たな容器に小分けして第三者が擅に別に作成した登録商標を付すこととまで容認したとは到底解することができない。」として商標権の侵害行為であると認めました。ですので今回の場合も、小分けにして登録商標を付すという行為は、商標権の侵害に該当する可能性がありますね。

そうなのね。なんだかガッカリだわ。でも仕方がないわよね。じゃあ・・・小瓶に、メーカーさんの登録商標を付さずに、独自のロゴを付して販売すれば、問題ないということよね?商標を使用しているわけじゃないし。

ええ・・・そうですね。これもまた微妙なところです。

商標権侵害とする説

「商標の剥奪抹消の行為は、商標の機能の発揮を妨げるものであり、商標を専有する権利を侵害する」というという考えがあります。つまり、登録商標を剥奪して商品を小分けする行為は、商標の機能を害する行為であり、商標権侵害に該当するという考えです。

商標権侵害でないとする説

一方で、商標権の侵害行為は、商標法25条、37条に該当する場合をいい、商標の剥奪抹消行為については、商標権の侵害には該当しないという考えもあります。

不正競争防止法に該当するおそれ

また、たとえ商標権侵害に該当しない場合であっても、製造元や販売元を偽る行為として不正競争防止法2条1項13号に該当する可能性もあります。

美容家はイメージが大切な商売だから、裁判沙汰になったら大変だわ。

ええ・・・そうですね。ケースバイケースですので、最終的には裁判所の判断を仰ぐことになる可能性がありますね。

よく分かったわ。ありがとう。また何かあったら、よろしくお願いしますね。

ということで、このお話の結末は・・・

案件「あつこさんの場合」

妻に聞いたところによると、あつこさんは独自にマッサージオイルを開発したようだ。

最近、妻がきれいになった気がする。あつこさんのマッサージオイルのおかげかもしれない。