アース国際特許商標事務所

芸能人の事件【芸名の商標登録】

有名人や芸能人が、自分の芸名を商標登録することはよくあります。権利者は、自分自身であったり、所属事務所であったり様々です。元モーニング娘。の加護さんも「加護亜依」について商標登録していました。

権利者は「株式会社メインストリーム」で、指定商品は、【第41類】の「演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏など」です(第5287159号)。

問題の発端は、加護さんが別の事務所に移ったことにあるようです。たしかに、芸名について芸能事務所が商標権を所有している場合は、事務所を移籍したり、独立したりする際に、揉め事が起こりそうですね。

加護さん側は、自身の芸名を自由に使用できなくなる可能性があることから、当該商標登録について不使用取消審判を請求しました。

不使用取消審判とは、登録から3年以上、継続して、日本国内において登録商標が使用されていない場合に、その登録の取り消しを求めて行う審判のことです。

審判を請求された商標権者は、使用の証拠を提出すれば、取り消しを免れ得ることができます。また、不使用ついて正当な理由があることを明らかにした場合も、取り消しを免れ得ることができます。

今回の場合、不使用取消審判を請求された商標権者側は、一部役務については使用の証拠を提出し、また、不使用の正当な理由として、下記の理由を主張しました。

「本人が登録商標の使用に非協力的であった」

「スキャンダルで登録商標の使用を不可能にさせた」

はたして、このような私的な事情が、不使用の正当な理由として認められるのでしょうか!?

私人間の事情は、不使用の正当な理由に該当するのか?

特許庁の判断は(取消2014-300394)、

これらの理由は,正当理由に該当するような「地震,水害等の不可抗力によって生じた事由」及び「法令による禁止等の公権力の発動に係る事由」のいずれにも該当しない。また,原告の主張する不使用の理由は,いずれも私人間の事情である。私人間の契約など私人間の事情は,正当理由に該当する「放火,破壊等の第三者の故意又は過失によって生じた事由」及び「その他の商標権者,専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰すことができない事由」に該当しない。

として、正当な理由には該当しないと判断されました。これに対して、商標権者側は、審決取消訴訟を提起しました。裁判所の判断は(平成27年(行ケ)第10057号審決取消請求事件)、

商標不使用の正当事由として,加護亜依が商標権使用に協力的でなかったことや,加護亜依のスキャンダルのために使用ができなかったことを主張したが(乙1の2),これらは,いずれも原告の所属タレント自身ないし同人と原告との関係に関する事情であって,いわば,原告の内部的な紛争にかかわる事情にすぎないから,本件商標の不使用がやむを得なかったといえる事情には該当せず,本件商標の不使用についての正当な理由とは認められない。

として、原告の請求を棄却し、不使用で一部役務が取り消されることになりました。つまり、商標を使用することができなかった正当な理由とは、

  • 地震,水害等の不可抗力によって生じた事由
  • 法令による禁止等の公権力の発動に係る事由

などのことであり、私人間の事情(内部的な紛争にかかわる事情)については、不使用の正当な理由として認められなかったということですね。