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著作権判例

血液型と性格の社会史事件 東京地判平成10年10月30日 平成7年(ワ)第6920号

事件のあらまし

自らの書籍Aの中に、他人の書籍Bの内容を「要約する形」で取り入れたことが問題となりました。書籍Bの著作者である原告は、著作権(複製権、翻案権)、著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権)の侵害であると主張して、訴えを提起しました。

著作権法43条2号には、「翻訳して引用ができる」旨が規定されていますが、今回の事件のように要約(翻案)の場合には、引用として認められるかどうかが争点となりました。

判決

裁判では、「要約による引用は、翻訳による引用よりも、一面では原著作物に近いのであり、これが広く一般に行われており、実際上要約による引用を認める方が妥当である(・・・中略・・・)同条2号には、翻案の一態様である要約によって利用する場合を含むものと解するのが相当である」と判断されました。

著作権法43条2号は、翻訳についての規定ですが、そもそも引用の場合は、脚色や映画化のよような典型的な翻案をした上で引用することが通常考えられないことから、引用の場合許される他人の著作物の利用方法として翻案をあえて挙げることをしなかったという判断のようです。

原告の請求は棄却され、著作権侵害は認められませんでした。

コメント

一般的に、他人の著作物の一部を要約して引用することはありますね。広範囲な部分を引用すると、適法な引用といえなくなってしまう可能性がありますし、一部を省略しながら長々と引用するのも現実的ではありません。この裁判では、要約して引用することが、引用の範囲内であると認められたという事案です。

「引用の範囲内」については、著作権法32条引用のページをご覧ください。

参考文献

『著作権判例百選第4版』編著:中山 信弘, 大渕 哲也, 小泉 直樹, 田村 善之

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