アース国際特許商標事務所

チョコボール

みなさんは、チョコボールといえば何を思い浮かべますか?大半の人が森永製菓のキョロちゃんのチョコボールを思い浮かべるのではないでしょうか。ピーナッツ、キャラメル、いちご、きなこもち等・・・一度は食べたことがあるでしょう。

森永製菓は「チョコボール」について商標登録しています。

商標

この「チョコボール」は、3条2項の適用を受けて登録されています。本来ならば、この「チョコボール」は指定商品「チョコレートを使用した菓子」について、その原材料、形状等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるとして3条1項3号の適用により登録を受けることができない商標です。しかし本願商標については、使用により需要者が森永製菓の業務にかかる商品であることを認識できるものであるとして全国的に周知であり3条2項の適用を受けて登録が認められました。そもそも「チョコボール」のピーナッツ、キャラメル味が発売されたのが1973年10月にもかかわらず、本願商標の登録が認められたのは2008年7月11日ですので、やはりこのような記述的商標の登録は難しいことがわかります。

名糖産業の「徳用チョコボール」

さて、みなさんは名糖産業の「徳用チョコボール」を御存知ですか?一口サイズのアイスクリーム菓子です。業務用スーパーなどで見たことがあるかもしれませんね。

2010年12月、森永製菓は「徳用チョコボール」を販売する名糖産業に対し、商標権を侵害されたとして、販売の差止め及び6000万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に提起しました。これに対し名糖産業は、1959年から「チョコボール」という商品名を使用しており、先使用による商標の使用をする権利を有する旨の主張を行い、商標権の侵害には該当しないと反論しました。

先使用による商標の使用をする権利

今回の訴訟では、名糖産業の先使用による商標の使用する権利が認められた形となりました。先使用による商標の使用する権利とは、商標法32条に規定されており、「他人の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でなくその商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標の使用をしていた結果、その商標登録出願の際(第九条の四の規定により、又は第十七条の二第一項若しくは第五十五条の二第三項(第六十条の二第二項において準用する場合を含む。)において準用する意匠法第十七条の三第一項の規定により、その商標登録出願が手続補正書を提出した時にしたものとみなされたときは、もとの商標登録出願の際又は手続補正書を提出した際)現にその商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その者は、継続してその商品又は役務についてその商標の使用をする場合は、その商品又は役務についてその商標の使用をする権利を有する。」というものです。

つまり、先使用が認められるためには以下のことが要件となります。

  1. 他人の商標登録出願前から日本国内において使用していること
  2. 不正競争の目的がないこと
  3. 他人の商標登録出願の際現にその商標が周知であること
  4. その者が継続してその商品又は役務についてその商標の使用をすること

そもそも先使用による商標の使用をする権利は、4条1項10号に該当するものとして登録を受けることができないものが過誤登録された場合の救済処置です。つまりは未登録有名商標の保護のための規定なのです。裏を返せば、森永製菓の「チョコボール」の商標登録は4条1項10号の無効理由を有しているということになりますね(登録後5年で除斥期間の適用)。

周知の程度(商標法32条)

では先使用の要件を満たすためには、どの程度の周知性が必要なのでしょうか?

(H5.7.22東京高裁平成03(ネ)4601商標権民事訴訟事件)では、「『需要者間に広く認識され』との要件は,同一文言により登録障害事由として規定されている同法4条1項10号と同一に解釈する必要はなく,その要件は右の登録障害事由に比し緩やかに解し,取引の実情に応じ,具体的に判断するのが相当というべきである。」と判断されています。4条1項10号が一地方での周知性ですので、それよりも緩やか(例えば3~4都道府県程度)に解釈されるものと考えられます。その程度の周知性がなければ、保護するに値する財産権的価値が生じないものとみなされ、先使用権を与える必要がないからです。

まとめ

商標法の保護目的は、使用によりその商標に化体した業務上の信用を保護することにあります。ですので、今回の「チョコボール」の商標のように、誰もが欲する記述的商標や識別力のない商標(3条1項3号~6号)について登録を受けるためには全国レベルでの周知性が必要となりますし、また先使用による商標の使用する権利についても、その蓄積された信用を既得権として保護しようとするものであり、少なくとも3~4都道府県程度の周知性が必要となります。ですので今回の場合、森永製菓と名糖産業の其々のこれまでの営業努力と商標の周知性が認められたという結果になっています。

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