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サントリー角瓶

わたしは氷 あなたはウイスキー

小雪さんが出ているサントリー「角瓶」CM・・・いいですよね。あんな上品な女性になりたいですが、私にとってウイスキーはちょっと上級な感じがします。

実は、このサントリー「角瓶」をめぐっては、商標登録するにあたり相当な苦労があったのです。

商標

3条1項3号により拒絶査定

平成6年5月17日に、サントリーは「ウイスキー」について「角瓶」を出願しました。

しかしこの出願は、「本願商標は、瓶の形状を表したにすぎない『角瓶』の文字を、普通に用いられる方法で書してなるものであるから、これを本願指定商品中、『角瓶入りのウイスキー』に使用しても、単に商品の品質、容量、形状を表示するものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する」ものとして登録を拒絶されてしまったのです。3条1項3号では、商品の産地・原材料、役務の提供場所・質などを普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる、いわゆる記述的商標については、登録ができない旨が規定されています。

確かに「角瓶」は、ウイスキーのボトルの形状を普通に示したものに過ぎず、商標としての識別力を発揮するものとは言えません。

3条2項の適用

拒絶査定を受けたサントリーは、拒絶査定不服審判を請求し、これまで商標「角瓶」を商品「角型瓶入りのウイスキー」について使用してきた結果、「角瓶」といえばサントリーの商品であると需要者の間で有名になっており、3条2項の適用により登録が認められるべきであると主張しました。3条2項というのは、3条1項3号~5号に該当するものであって識別力を有さないものであっても、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては商標登録を受けることができる、という規定です。

識別力のないものであっても、使用の結果、全国的に有名になっていれば識別力を有しているものとして登録を受けることができるのです。

有名であるとの根拠は、例えば、

  1. 実際に使用している商標並びに商品・役務
  2. 使用開始時期、使用期間、使用地域
  3. 生産・証明・譲渡の数量、営業規模
  4. 宣伝広告の方法・回数・内容
  5. 一般紙、業界紙、雑誌、インターネットにおける記事の掲載回数・内容
  6. 需要者の商標の認識度を調査したアンケート結果

などを勘案して有名かどうかを判断します。ここで留意すべきことは、使用の商標と出願の商標が同一であるかどうかです。

拒絶査定不服審判では、「「角瓶」という表示が、それ単独で多くの銘柄のウイスキーの中の特定のウイスキーを示す商標として使用されているということができず、また本願商標と使用に係る標章とは同一であることは認められない」として3条2項の適用は認められませんでしたが、東京高裁においては、「本願商標と同一と認められる商標が、原告により、遅くとも昭和28年ころから審決時に至るまで、新聞、雑誌の広告及びテレビコマーシャル等において、相当量が販売されている本件製品につき我が国のほぼ全域にわたって多数回使用されており、その使用の結果、需要者において、上記商標が使用された本件製品が原告の業務に係る商品であることを認識することができるに至っているものと認めることができる。」と判決が下されました。出願してから登録されるまで、なんと8年間もかかっているのです。

立体商標としての角瓶

またサントリーは、角瓶のボトルについて立体商標として出願をしました。

立体商標

しかしこの出願は、拒絶されてしまいました。

商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは、前示したように、商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感に関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。」として3条1項3号の拒絶査定が下されました。

サントリーは上記の「角瓶」の商標登録と同じく3条2項の適用を受けようと、ボトルの形状が全国的に有名であるとの主張をしました。しかしその主張は認められませんでした。

商品等の形状に係る立体商標が、商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるのは、原則として使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合であって、かつ、使用に係る商品と出願に係る指定商品も同一のものに限られるものである。したがって、出願に係る商標が立体的形状のみからなるものであるのに対し、使用に係る商標が立体的形状と文字、図形等の平面標章より構成されている場合には、両商標の全体的構成は同一でないことから、出願に係る商標については、原則として使用により識別力を有するに至った商標と認めることができない。」という理由です。3条2項の適用を受けて登録が認められるためには、使用している商標と出願の商標が同一のものでなけれなならないのです。結局この立体商標については、3条2項の適用は認められず、3条1項3号で拒絶審決が下されました。この事件はその後、東京高等裁判所で争われましたが、東京高裁は特許庁の審決を容認し、登録は認められませんでした。

立体的形状に識別力ある文字などを付して登録

角瓶

サントリー「角瓶」についての立体商標は、立体的形状に識別力ある文字などを付して登録されています。

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